「脳死移植の論点整理として最適」 おすすめ度:
投稿日:2007-11-11
そもそも「脳死は人の死か」という段階の議論で、移植法施行時に梅原猛先生が、いわゆる3兆候(心臓停止、呼吸停止、瞳孔散大)以外は人間の自然な感情として死として認められないと反論されていた記憶がある。
私自身も、死の基準さえクリアになれば、移植自体は現段階における医療技術の「次善の策」として認められるべきだと考えてきたし、またそれを疑いさえしなかった。
そこで手に取ったのがこの本。
様々な点から脳死移植を批判しており、論点整理の意味でも非常に良い内容だと思う。
中でもこれまで議論のテーブルにさえ載らなかったのが、脳死臓器移植を市場原理の観点から否定していることだ。
希少価値のあるものは高価になる。
この当然の理論が臓器移植には通用しない。
しかし、移植は純粋な医療行為であり、市場原理を持ち込むことはそもそもなじまない。
それに対し著者は、移植医、コーディネーター、医薬品メーカーが利益を得てコネクションを持っている以上、経済活動から切り離されるべき理由はない、と喝破する。
そして、現在光明が見え始めた再生医療に資源を注ぎ込むべきだ、と言うのだ。
それでも私は脳死臓器移植を支持したい。
現在の医療技術において「次善の策」としての脳死臓器移植は「仕方がない」。
もちろん近い将来、他人の身体を当てにしなくても良い再生医療が確実な技術となることが最も望ましいとは考える。
「すばらしい。」 おすすめ度:
投稿日:2007-06-12
自分が脳死状態になった時に臓器移植をすることは、善いことだと思っていた。
実際、自分がもし脳死状態になったら臓器を使ってくれても良いかもと思っていた。
が、本書を読むとそれがかなり疑わしくなり、何も考えていなかったと痛感させられた。
筆者は、脳死臓器移植反対派で、その主張は明確である。
本書もとてもわかりやすく、事前の知識無しに100%理解できると言って良い。
他に脳死臓器移植反対派の著作を読んだわけではないが、本書を読む限り、反対派の中でも問題自体に突っ込む鋭さは非常に優れたものだと思う。
もちろん移植反対の方に偏っているわけだから、その点は考慮するべきだろうが、反対派の意見が知りたいならこれ一冊で十分だと思う。
ただ、内容と装丁デザインが合ってないのが残念・・・
「移植を語るなら、まず本書を読むべし。」 おすすめ度:
投稿日:2006-07-11
臓器移植は、ドナーとレシピエントが非対称な医療であるが故に不完全医療(=金持ちしか受けられない不公平医療)であること。
それが国内では実験医療=無料であることから見えなくなっていること。
資本主義下の医療のキャナライゼーションの一環としてあるが故に「過剰医療」の一種に過ぎず、それに資源配分することは多くの救える他の命を軽視することになるが故に社会的に推進されてはならないこと。
従って、それは環境倫理・世代間倫理的に間違いであること。
そして、人間はいつかは死ぬものであり、どんな偉人でさえ、その人間の代わりはいくらでもおり、誰かを犠牲にしてまで生き延びる価値など万民に存在しないこと。
筆者の論点は明快であり、無条件に善行ゆえ推進すべきと考えさせられてしまっている医療関係者(=賛成派)や、何となく気持ち悪いから嫌だと感情的反対論を唱える一般人(=反対派)も共に真っ先に踏まえるべき書である。